こんにちは。ネクスドライブ代表の上井です。2025年3月4日から7日までの4日間、東京ビッグサイトにて「日経メッセ2025...
【展示会レポート】オルガテック東京2025:未来のオフィスと働き方をデザインするヒントがここに
2025年6月3日から5日にかけて、東京ビックサイトで「オルガテック東京 2025」が盛大に開催されました。本展示会は、これからのオフィス空間とワークスタイルの未来を指し示す、アジアを代表する国際的なオフィス家具・設備の専門見本市です。
現代のビジネス環境は、DXの加速、グローバル化、働き方改革、そして「人材獲得競争の激化」といった大きな潮流の中にあります。こうした状況下において、オフィスはもはや単なる「業務を遂行する場所」ではありません。企業理念を体現し、優秀な人材を惹きつけ、イノベーションを生み出すための「戦略的投資」として、その重要性が急速に高まっています。
今回開催された「オルガテック東京 2025」は、まさにその答えを探る場となりました。本レポートでは、会場で提示された「未来のオフィス」のビジョンと、そこに表れていた本質的な変化について、詳しく解説します。
第1章:主催とイベント概要について
「オルガテック東京」の主催は、70年以上の歴史を誇るドイツのケルンメッセ社と、日本のオフィス家具業界を牽引する一般社団法人日本オフィス家具協会(JOIFA)です。世界最大級のオフィス見本市「オルガテック」のグローバルな知見と、日本のビジネス文化やワークスタイルを知り尽くした国内の知見が融合することで、他の展示会とは一線を画す、質の高い情報交換の場が形成されています。
2025年の開催テーマは「SHIFT ON DESIGN – デザインがもたらす、働き方のシフト」。このテーマは、デザインを単なる「見た目の美しさ」や「機能性」に留めず、働き方そのものをより良い方向へ能動的に「シフト」させる力として捉えている点に大きな意義があります。具体的には、以下のようなシフトが会場の至る所で示唆されていました。
- 効率性から、体験価値(エクスペリエンス)へ
- 固定されたレイアウトから、俊敏(アジャイル)な空間へ
- 個のタスクから、共創(コラボレーション)を生む生態系(エコシステム)へ
国内外のリーディングブランドが一堂に会し、家具という枠を超えて、照明、音響、床材、ITインフラ、そして空間を彩るアートに至るまで、オフィス環境を構成するあらゆる要素が網羅的に展示されていました。
第2章:来場者の傾向と熱気
会場を訪れていたのは、建築家、インテリアデザイナー、デベロッパーといった空間設計のプロフェッショナルだけではありません。企業の施設管理担当者、総務・人事担当者、DX推進担当者、経営層まで、非常に多彩な顔ぶれでした。前回2024年の来場者数は25,487名でしたが、2025年もその熱気は健在で、各ブースでは具体的な課題に基づいた真剣な商談や情報交換が繰り広げられていました。
来場者の目的は、単なる製品の比較検討に留まりません。「快適で生産性高く過ごして貰えるオフィスとは」「従業員の出社率が伸び悩む中、どうすればオフィスに来る価値を創出できるか」「リモートワーカーと出社組の間に生まれる一体感の欠如を、空間デザインでどう埋めるか」「ウェルビーイング施策の投資対効果(ROI)をどう測り、経営層に説明するか」
こうしたリアルな悩みを抱えた来場者たちが、出展社が提案するコンセプト空間を実際に体験し、自社への導入イメージを膨ませている様子が印象的でした。本イベントは、製品を見る場であると同時に、同業他社や異業種の担当者と課題を共有し、新たな視点を得る貴重なネットワーキングの機会としても機能していました。
第3章:出展ブースから読み解く4つの重要トレンド
各社のブースは、単に製品を陳列するのではなく、具体的なワークシーンを想定した「空間提案型」の展示が完全に主流となっていました。そこから読み解ける4つの重要なトレンドについて、深く掘り下げていきます。
1. ハイブリッドワークを最大化する「アジャイル」な空間
今回の展示で最も強く打ち出されていたテーマは、ハイブリッドワークを前提とした「アジャイル(俊敏)」な空間づくりです。集中作業、Web会議、カジュアルな相談、複数人での協業など、刻々と変化する業務内容に合わせて、ワーカー自身が自在に環境を最適化できるソリューションが数多く提案されていました。たとえば、キャスター付きで容易に移動できるデスク・スタンディングデスクやホワイトボード、高い吸音性を持つパネルで瞬時に個室空間を生み出す可動式パーテーション、Web会議に特化した1人用ワークポッドなどが挙げられます。また、オフィス全体を「フォーカスゾーン」「コラボレーションゾーン」「ソーシャルゾーン」といった機能ごとにゾーニングし、家具によって緩やかに空間を仕切るというアプローチは、もはや現代オフィスにおける標準的な設計思想となりつつあります。
2. 「ウェルビーイング」と「サステナビリティ」の深化
従業員の心身の健康(ウェルビーイング)は、企業の生産性や創造性を支える基盤として、ますます注目を集めています。この考え方は一段と深化し、たとえば体内リズムを整える「サーカディアンリズム照明」や、自然とのつながりを感じさせる「バイオフィリックデザイン」など、より具体的なソリューションが多く展示されていました。また、近年再注目されているのが音環境です。吸音・遮音性能に優れた壁材や天井材、会話のプライバシーを守るサウンドマスキングシステムなど、高度な音響設計へのニーズが高まっています。
一方、「サステナビリティ」も企業の社会的責任として不可欠な要素となっています。会場では、リサイクル素材や廃材をアップサイクルした家具、製造から廃棄まで環境負荷を抑える商品などが数多く展示されていました。オフィス空間におけるこうした取り組みは、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)姿勢を体現する場として、ブランディングの観点からも強く意識されています。
3. 空間に溶け込む「インビジブル・テクノロジー」
オフィスにおけるテクノロジーは、存在を主張するのではなく、空間と一体化しながら自然にワーカーを支える「インビジブル(見えない)」な存在へと進化しています。たとえば、デスクや会議室の利用状況をセンサーで検知し、専用アプリでリアルタイムに空席を確認・予約できるシステムは、フリーアドレスのオフィス運営を円滑にする代表例です。さらに、蓄積された利用データを分析し、より効果的なレイアウト改善に活かす取り組みも多く見られました。そのほかにも、ケーブル類を完全に隠蔽できる電源・データ供給システムや、高品質な映像・音声により遠隔地との心理的距離を縮める会議ソリューションなど、テクノロジーの存在感を感じさせずに業務への集中を促す工夫が随所に凝らされていました。
4. 五感を刺激する「マテリアル」と「カラー」
これまでのオフィスに多く見られた、無機質な白やグレーの空間から脱却し、人間の五感を心地よく刺激する素材(マテリアル)や色彩(カラー)への関心が高まっています。手触りのよい天然木、温かみのあるファブリック、鎮静や活性といった心理効果をもたらす戦略的なカラープランニングなどが、多くのブースで実践されていました。これらの工夫は、空間に「企業の個性」や「ブランドらしさ」を表現する手段としても有効です。たとえば、コーポレートカラーをアクセントとして取り入れたり、地域に根ざした伝統素材を活用したりすることで、ワーカーの帰属意識を高めると同時に、訪問者に企業のフィロソフィーを直感的に伝える効果も期待されています。
まとめ
オルガテック東京 2025は、単なるオフィス家具の展示会にとどまらず、「企業と個人の持続的な成長を、空間デザインはいかに支えるのか」、そんな本質的な問いへのヒントを探る場となっていました。今回浮かび上がった 「アジャイル」「ウェルビーイング」「サステナビリティ」「テクノロジー」「マテリアル」 といったキーワードは、それぞれが独立しているのではなく、相互に連携しながら、これからの「働きがい」を構成する重要な要素として提示されていました。
オフィスを「コスト」として捉える時代は終わり、企業の競争力を高めるための「戦略的投資」として位置づける視点が不可欠です。その第一歩は、「自社のオフィスは何のために存在するのか」という問いを立て直すことから始まります。本レポートが、その対話のきっかけとなれば幸いです。
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