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【展示会レポート】ものづくりワールド 東京 2025:製造業の未来を拓く最新技術の潮流
2025年7月9日、日本の製造業の中枢・幕張メッセで、「ものづくりワールド 東京 2025」が開幕しました。会期は7月11日までの3日間。単なる製品展示会の枠を超え、日本のものづくりが抱える課題に挑み、未来を切り拓くための知見・最新技術、そして多彩な人材が集う年に一度の大型イベントです。本レポートでは、活気あふれる会場の空気と、そこから見えてきた製造業の将来像を、詳細にお伝えします。
はじめに
少子高齢化に伴う労働力不足、複雑化するグローバルサプライチェーン、ラストワンマイル配送の効率化、そして日本の持続的な技術革新、カーボンニュートラルへの対応など、現代の製造業は多様な課題に直面しています。これらを克服するには、従来の手法に捉われず、デジタル技術の積極活用、高度な加工技術の導入、自動化ソリューションの推進が不可欠です。
「ものづくりワールド」は、まさにこうした課題解決の最前線です。研究開発の期間短縮、生産性の抜本的な向上、揺るぎない品質の実現、そしてコスト競争力を高めるためのヒントが、会場の至る所で見つかります。当社も、業界の最新動向を肌で感じ、新たなビジネスチャンスを探るべく来場しました。本レポートを通じて、会場の熱量と技術の進化を追体験いただき、貴社の事業戦略の一助としていただければ幸いです。
第1章:主催とイベント概要について
主催は、世界有数の規模を誇る展示会運営会社 RX Japan株式会社です。幅広いBtoB分野での展示会企画・運営で培ってきたノウハウを活かし、「ものづくりワールド」は以下10の専門展示で構成されています。
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設計・製造ソリューション展:CAD/CAEやPLM/PDMなど、製品開発の上流工程を支えるITソリューション。
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機械要素技術展:モータやねじ、ばねといった、あらゆる機械の根幹をなす部品・技術。
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ヘルスケア・医療機器 開発展: 医療分野に特化した部品、開発・製造技術。
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工場設備・備品展: 省エネ製品や安全用品など、工場の安定稼働に欠かせない製品群。
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ものづくりAI/IoT展: スマートファクトリーを実現する予知保全や遠隔監視などのソリューション。
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次世代 3Dプリンタ展: 金属・樹脂AM(アディティブ・マニュファクチャリング)技術と材料。
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航空・宇宙機器 開発展: 軽量化・高信頼性が求められる航空宇宙分野向けの部品・技術。
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計測・検査・センサ展: 品質の生命線となる最新の計測・検査機器。
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製造業DX展: 設計から製造、営業、管理部門まで、企業全体のDXを推進するソリューション。
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ものづくりODM/EMS展: 開発・製造のアウトソーシング先を探すためのマッチングの場。
この10の専門展示構成の最大のメリットは、来場者が自社の課題やニーズに応じて会場内を自由に移動し、複数分野を横断的に視察できる点です。たとえば、設計担当者が「設計・製造ソリューション展」で最先端のCADを確認した後、隣接する「次世代 3Dプリンタ展」でそのデータを活用した試作技術を検討し、さらに「機械要素技術展」で最適な部品の情報収集を行うといった一連のプロセスを、効率的に一会場で完結できます。こうしたシームレスな体験こそが、ものづくりワールドに他の展示会では得られない独自の価値をもたらしています。なお、2025年は幕張メッセ全館を使用し、世界各国から約1,800社が出展しています。
第2章:来場者の傾向
会場を歩いて強く感じるのは、来場者の目的意識の高さです。「何か面白いものはないか」といった漠然とした視察ではなく、「自社のこの製造工程を短縮したい」「この部品のコストを下げたい」といった、具体的かつ切実な課題を携えてブースを訪れる担当者が大半を占めていたように思えました。そのため、出展者との会話も自然と熱を帯び、技術的な詳細や導入後の費用対効果といった核心に迫る質疑応答が随所で繰り広げられています。
業種も自動車、電機、精密機器といった大手メーカーから、独自の技術で世界と渡り合う町工場まで、日本のものづくりを支えるあらゆる層が集結しています。参考までに、昨年2024年の来場者数は69,717名にものぼりました。今年も同等、あるいはそれ以上の来場者で会場は活気に満ちており、通路を埋め尽くす人の波からも、本展示会への期待の高さがうかがえます。
本展示会は情報収集の枠を超え、業界・業種の垣根を越えたビジネス交流やネットワーキングの場としても機能しています。OEM企業と部品メーカー、素材メーカーと装置メーカー、研究者や技術者、出展企業同士まで、さまざまな分野の担当者がブース前で積極的に商談や意見交換を行い、新たな協業や技術連携の可能性を模索する光景が目立ちました。こうした多様な出会いと対話が、ものづくりワールドならではの新たな価値やイノベーションを生み出していると言えます。
山形県の企業が集まるパビリオン
第3章:出展ブースの様子
会場には最先端技術やデモンストレーションの熱気があふれ、特に以下のテーマ展示が来場者の大きな関心を集めていました。
「現場で使える」製造業DXソリューション:DXという言葉が先行するのではなく、現場の課題解決に直結する具体的なソリューションが主役です。あるブースでは、工場の生産ラインをデジタル空間に再現する「デジタルツイン」技術を展示。モニター上では、現実の設備と全く同じ動きをする仮想の工場が稼働しており、そこで得られたデータを基に、生産効率のボトルネックを特定したり、AIが最適な人員配置を提案したりするデモンストレーションが行われています。また、熟練技術者の目に頼っていた微細な傷や汚れの検査を、AI画像認識が瞬時に行うシステムの前では、多くの品質管理担当者がその精度とスピードに驚きの声を上げていました。
次世代加工技術と機械要素:機械要素技術展のエリアは、日本のものづくりの底力を象徴する空間です。スマートフォンよりも小さなベアリングや、μm(マイクロメートル)単位の精度で加工された金属部品が、ガラスケースの中で静かな輝きを放っています。特に目を引いたのは、EV(電気自動車)の軽量化に貢献する特殊な樹脂製ギアや、半導体製造装置の過酷な環境に耐えるセラミックス部品など、用途が明確な高機能素材・部品の展示です。実演コーナーでは、難削材であるチタン合金を高速で切削する工作機械が甲高い音を立てて稼働し、その技術力の高さを来場者に示していました。
「試作」から「実用」へ、進化するAM技術:次世代3Dプリンタ展では、AM技術がもはや試作品製作用のツールではないことを証明する展示が相次いでいます。あるブースでは、従来の金型では製造不可能な、内部に複雑な冷却水路を持つ樹脂成形用金型を展示。これにより、冷却効率が飛躍的に向上し、ハイサイクル化を実現します。また、人体への影響が少ないチタンを用いて、患者一人ひとりの骨格に合わせて造形されたインプラント(人工関節)のサンプルは、医療分野におけるAM技術の大きな可能性を感じさせます。単に造形するだけでなく、造形後の表面処理や強度測定まで含めたトータルソリューションとして提案する企業が増えているのも、今年の傾向です。
人と共存する自動化・省人化ソリューション:工場設備・備品展で最も大きな面積を占めていたのは、やはり自動化関連の展示です。しかし、その主役は、もはや巨大な産業用ロボットだけではありません。人と並んで作業ができる「AI協働ロボット」が、繊細な力加減で部品を組み立てたり、人の作業を補助したりするデモンストレーションが人気を博しています。また、床に貼られた磁気テープなどを必要とせず、自ら施設内の地図を作成して人や障害物を避けながら自律走行するAGV(無人搬送車)は、柔軟な生産ラインの構築に貢献する技術として注目されていました。誰でも直感的に操作できるタブレット端末を使ったロボットのティーチング実演も行われており、専門家でなくとも自動化を進められるソリューションが充実してきています。
現場作業を遠隔で管理・共有できるウェアラブルデバイスLINKLETは、Microsoft TeamsやZoomと簡単に連携可能。
SIMカード内蔵で4G通信にも対応し、Wi-Fi環境がない現場でも稼働できる
調達業務・見積業務をDX化するLeaner Technologies
まとめ
3日間にわたる「ものづくりワールド 東京 2025」は、製造業が抱える課題が明確であるからこそ、そこに投入される技術の進化もまた加速しているという事実を強く印象付けるものでした。DX、自動化、新素材、サステナビリティといったキーワードは、もはや単なる理想ではなく、具体的な製品・技術として現場に実装される段階に来ています。
本展示会は、最新技術の発表・ショーケースであると同時に、日本のものづくりの未来を担う人々が知恵を交換し、新たな価値を創造するためのプラットフォームです。ここで得られた知見やネットワークは、不確実な時代を乗り越え、企業の競争力を強化するための大きな原動力となるでしょう。本レポートが、会場の熱気や技術の息吹をお伝えし、皆様のビジネスが新たな成長へと踏み出すきっかけとなれば幸いです。
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