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【来場レポート】OPIE '25(OPTICS PHOTONICS International Exhibition 2025)

作成者: Shinsuke Uei|2025/04/23

2025年4月23日より、光技術とフォトニクス分野における国内最大の国際専門展示会「OPIE '25(OPTICS PHOTONICS International Exhibition 2025)」がパシフィコ横浜で始まりました(初日はあいにくの雨でした)。4月25日までの3日間にわたり、国内外から光関連の企業、研究機関、専門家が集結し、最新の技術や製品、そして未来を形作る革新的なアイデアが披露されました。

現代社会において、光技術は情報通信、医療、製造、計測、エネルギー、エンターテイメントなど、あらゆる産業分野の基盤を支え、私たちの生活を豊かにするために欠かせない存在となっています。OPIEは、その進化の最前線を体感し、業界の主要な企業と直接交流できる、年に一度の貴重な機会となりました。

本レポートでは、この「OPIE '25」の活気に満ちた会場の様子や注目すべきポイントを、詳しくご紹介します。光技術の最新トレンドを把握し、皆様のビジネス拡大や研究開発活動における新たな発見、そしてイノベーションのヒントを得る一助となれば幸いです。

第1章:主催とイベント概要について

「OPIE '25」は、光技術関連産業の振興と発展を目指して活動する一般社団法人OPI協議会が主催し、株式会社オプトロニクス社が運営しています。この協議会は、展示会の開催に加え、セミナーやシンポジウム、技術交流会を通じて、産学官の連携促進や人材育成にも寄与しています。2024年に開催された「OPIE」には、15,049名の来場者が訪れました。

この展示会の最大の特徴は、光技術を応用分野や要素技術ごとに細分化した7つの専門展示会が同時に開催される点です。これにより、来場者は特定の技術分野を深く探求しつつ、関連分野の最新動向も効率的に把握することができます。

  • レーザーEXPO: 最先端のレーザー発振器、情報通信、材料加工、計測機器などが集結。製造業から医療まで、幅広い応用分野の最新動向を発信。
  • レンズ設計・製造展: カメラ、プロジェクター、センサー等に不可欠な光学レンズの設計技術、製造・加工装置、評価機器などが一堂に会します。
  • ポジショニングEXPO: ナノメートル単位の精密位置決めを実現するステージ、アクチュエーター、制御技術などが集まります。
  • 宇宙・天文光学EXPO: 人工衛星、望遠鏡、探査機などに搭載される極限環境対応の光学部品やシステム技術を紹介。
  • 光源・光学素子EXPO: レーザー、LED、ランプなどの各種光源技術や、レンズ、ミラー、フィルター、回折格子、光学結晶といった基盤となる光学素子・材料に焦点を当てています。デバイスの心臓部とも言えるこれらの要素技術の進化が展示されました。
  • 光と画像のセンサ&イメージングEXPO: マシンビジョン、医療、計測、監視など多岐にわたる応用を持つ光センサー、イメージセンサー、カメラモジュール、そして取得した画像データを処理・解析する技術が集まります。高解像度化、高速化、高機能化(例:3D、マルチスペクトル)が注目されます。
  • 光通信・要素技術&応用EXPO: 5G / Beyond 5G、データセンター、IoTなどを支える光ファイバー、光トランシーバー、光スイッチ等の要素技術から、LiDARなどの光センシング応用まで、成長著しい分野の最新動向を紹介します。高速大容量、低遅延、低消費電力化への貢献が期待されます。

公式サイト:https://www.opie.jp/

これらの専門展示会が同時に開催されることで、来場者は自分の専門分野に関する詳細な情報を収集するだけでなく、関連する分野の技術トレンドにも簡単にアクセスでき、異なる分野を横断する視点から新しいアイデアやビジネスの連携を見つけやすくなっていました。

会場には、上記の各分野に対応する光学部品、光学材料、光源、計測・分析機器、イメージング機器、光通信デバイス、加工装置、シミュレーションソフトウェアなど、光に関連するあらゆる製品・技術が集まっています。 さらに、同時開催される技術セミナーや特別講演会もOPIEの大きな魅力の一つです。各分野の専門家による最新の研究成果の発表や市場動向の解説は、業界の未来を理解するための非常に有益な情報源となります。


第2章:来場者の傾向

OPIE '25には、例年、光技術を活用する、あるいは関心を寄せる多様なバックグラウンドを持つ来場者が全国、そして海外からも訪れていました。その目的も多岐にわたります。

  • 最新技術や製品の情報収集: 自社の研究開発や製品設計に役立つ最新の光学部品、材料、装置、ソリューションの情報を効率的に集めます。
  • 課題解決のためのヒント探索: 製造プロセスの改善、製品性能の向上、コスト削減、開発期間の短縮といった自社の課題を解決するための具体的な技術やアイデアを見つけます。
  • 新規サプライヤーやパートナーの探索: 新しい取引先や共同研究・開発のパートナーを見つけ、ビジネスネットワークを広げます。普段は接点を持つことが難しい海外の出展企業も多く参加していました。
  • 業界トレンドや市場動向の把握: 光技術全体の最新動向や競合他社の動き、将来の市場予測を把握し、自社の事業戦略に活かします。
  • 技術相談や具体的な案件の打ち合わせ: 出展企業の技術者や営業担当者と直接対話し、具体的な技術課題の相談や導入に向けた議論が盛んでした。

来場者の所属は、電機メーカー、自動車および部品メーカー、精密機器メーカー、半導体・電子部品メーカー、医療機器メーカー、化学・材料メーカー、ガラスメーカー、情報通信事業者、ソフトウェア開発企業、商社、大学、公的研究機関など多岐にわたります。

役職別に見ると、研究・開発部門の研究者やエンジニア、生産技術・製造部門の担当者、品質管理・評価担当者、設計エンジニア、購買・調達担当者、さらには経営層や事業企画担当者まで、幅広い層が訪れています。特に、具体的な課題解決や技術導入を目的とした意思決定層の参加も多く見受けられました。

国際展示会としての側面もあり、アジア圏を中心に海外からのバイヤーや技術者も訪れ、グローバルな情報交換が行われていました。

第3章:出展ブースの様子

パシフィコ横浜の展示ホール内は、各社が技術力を示すために工夫を凝らしたブースが並んでいます。各社の多様な製品やサンプル、大型機械の実演が行われ、活気に満ちていました。多くの来場者が通路を行き交い、興味を持ったブースで立ち止まり、熱心に説明を聞いたり、製品に触れたり、デモンストレーションに見入ったりする光景が広がっていました。様子をいくつかご紹介します。

  • 進化するレーザー技術: 製造現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支える高出力かつ高精度なレーザー加工機のデモンストレーションは、常に多くの来場者の注目を集めていました。金属や樹脂が精密に加工される様子を間近で観察でき、そのスピードと精度には驚かされます。さらに、医療分野での低侵襲治療や診断、LiDARなどのセンシング光源として、小型で高効率な新型レーザーも注目の的です。ブースでは、具体的な加工サンプルや応用事例が豊富に展示されていました。
  • 高機能化する光学部品と材料: スマートフォンのカメラのさらなる高画質化や、ARグラスの薄型化・軽量化、自動運転に必要な高信頼性レンズなど、最先端デバイスのニーズに応える光学部品・材料の展示が盛況です。ナノインプリント技術や自由曲面加工技術を活用した特殊レンズ、新しい特性を持つ光学結晶や高機能フィルムなどが紹介されています。特に、ARグラスの今後の発展には大きな期待が寄せられています。
  • AIと統合されたセンシング・イメージング: AI技術との融合により、画像認識やデータ解析の能力が大幅に向上した産業用カメラやセンサーシステムが多数展示されています。ブースでは、外観検査の自動化やロボットピッキングの精度向上、赤外線カメラを用いた異常検知などのデモンストレーションを通じて、具体的な導入効果が分かりやすく示されていました。
  • 次世代インフラを支える光通信技術: データセンターでのトラフィック増加に対応するための超高速光トランシーバーや、5G/Beyond 5Gネットワークの構築に必要な光部品・モジュールが注目されています。省エネルギー化を促進する技術も重要なテーマであり、各社が最新のソリューションを競い合っていました。
  • 宇宙開発を支える最先端光学: より遠く、より詳細に宇宙を観測できる大型望遠鏡の部品技術や、厳しい環境下でも高い性能を発揮する衛星搭載用光学センサーが展示されており、宇宙開発への関心の高まりがうかがえます。
  • アカデミアとスタートアップの挑戦: 大手企業に加えて、独自の革新技術を持つ大学の研究室やスタートアップ企業のブースも、OPIEの重要な構成要素となっています。実用化が期待される革新的な研究成果や、ニッチ市場を狙ったユニークな製品が紹介され、新たなイノベーションの兆しを感じさせます。

多くのブースでは、製品カタログやパネル展示に加えて、実機のデモンストレーションやAR/VRを活用したシミュレーション体験など、体験型の展示が行われ、来場者の理解を深める工夫が凝らされていました。IT系の展示会では通常、声がけやノベルティの配布が一般的ですが、この展示会では声がけが少なく、実物や実機でのアピールが際立っていました。また、アジアをはじめヨーロッパの企業も多数参加しており、会場全体がビジネス創出の活気に満ちていました。

板橋区産業振興公社による板橋区パビリオン

チェコパビリオン

まとめ

「OPIE '25」は、光技術の最新製品、技術、そして未来へのビジョンが一堂に集まる、他に類を見ない専門展示会です。3日間の会期中、出展者と来場者の間で活発な情報交換や技術交流が行われ、新たなビジネスやイノベーションの種が数多く生まれていることでしょう。本レポートで取り上げたレーザー、光学部品、センシング、光通信、宇宙応用といった分野は、今後ますますその重要性を増し、AI、IoT、自動運転、グリーンエネルギー、次世代医療といったメガトレンドを強力に牽引していくと考えられます。OPIE '25は、まさにその最前線を体感し、未来への指針を得るための絶好の機会と言えます。

この展示会で得られるメリットは、単に最新情報を収集するだけに留まりません。業界のキーパーソンや注目企業との繋がりを構築し、具体的な技術課題について専門家と直接議論し、そして新たなビジネスパートナーシップを築くための貴重なプラットフォームとなっています。残念ながら参加できなかった方も、本レポートや公式サイトの情報などを通じて業界動向を把握し、次回の参加を検討してみてはいかがでしょうか。光技術は、私たちの未来をより便利に、明るく、豊かにするための鍵を握っています。OPIEは、その進化を加速させる原動力として、今後も重要な役割を果たしていくことでしょう。次回の開催にも大きな期待が寄せられます。