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なぜ今、BtoB企業は展示会出展に力を入れているのか?

コロナ禍で一時中断を余儀なくされた展示会が、2023年以降再び活気を取り戻しています。都市部を中心に大規模な展示会が復活し、展示会関連市場の成長が顕著になっています。特にBtoB企業にとって、展示会は新規リードの獲得や商談の機会創出、業界内でのブランド認知度向上といった重要な役割を果たします。

一般社団法人日本イベント産業振興協会の調査によると、2023年の展示会市場は「2兆6,337億円と前年比126.6%」(出典)と急成長し、コロナ前の水準に近づいています。コロナ前には少なかったIT企業やスタートアップ企業の出展も目立つようになり、リアルな場でのマーケティング活動が再び注目されています。

なぜ今、BtoB企業が展示会出展を強化しているのか。本記事ではその背景とメリットについて詳しく解説します。

第1章:オンライン施策の限界とリアル展示会の強み

コロナ禍では、オンライン商談やウェビナー、バーチャル展示会が急速に広まり、多くの企業がこれらの方法に移行しました。この時期、多くの企業がマーケティング予算を検索連動型広告やSNS広告などのデジタル広告に割り振るようになりました。オンライン施策には、地理的な制約を受けずに参加や閲覧が可能で、コストを抑えられるという利点があります。

しかし、多くの企業はオンライン施策だけではリード獲得の効率や商談の密度に課題があると感じています。特に、「偶然の出会いが少ない」「リアルな体験ができない」「信頼関係の構築に時間がかかる」といった問題が指摘されています。

一方、展示会では「直接会って話せる」「その場で商談につながる」といったリアルならではの強みがあり、BtoBマーケティングの施策として再評価されています。実際、多くの企業が展示会を「最も成果につながる施策の一つ」として位置付けており、出展回数を増やす企業も増加しています。また、オンライン施策ではなかなか接点を持てない企業群が展示会に来場するという点も注目すべきポイントです。

第2章:展示会のリード獲得・商談効果の高さ

展示会は、質の高いリードを獲得しやすく、商談化のスピードが速いという特長があります。展示会来場者の多くは、自社の業界に関心を持つプロフェッショナルであり、実際の製品やサービスを体験し、企業の担当者と直接会話できることで、購入意欲が大きく向上します。来場者は情報収集を含め「何かの課題を解決するため」に展示会に訪れているのです。

株式会社才流がまとめた報告によれば、「リード獲得数は来場者の5〜10%程度、そして商談化できるのはそのうちの1〜5%程度」(出典)とされています。特に、展示会でのリード獲得単価は平均8,000〜10,000円とされ、BtoB商材の成約単価を考慮すると、ROI(投資対効果)が高いと評価されています。(ただし、自社の製品の利益率やビジネスモデルによってROIは大きく変動するため、慎重な試算が必要です)

さらに、展示会場では企業のブースデザインやデモンストレーションを活用して競合との差別化を図り、企業の信頼性や専門性を効果的にアピールすることが可能です。また、「一度対面でお会いしている」という事実が、アフターコロナ時代において信頼関係を築く上で非常に重要な要素となっています。こうした特長から、展示会はBtoB企業にとって「効率的に商談の機会を生み出す場」として再評価されています。

第3章:展示会のDX化とマーケティング戦略の進化

 

最近では、展示会のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化が進展し、従来の方法とデジタル施策を組み合わせることで、より効果的なリード獲得やナーチャリングが可能になっています。

展示会で主流となっているQRコードを活用することで、企業名や氏名、連絡先などのリード情報を即座にデータ化し、展示会後のフォローアップを迅速に行う企業が増加しています。また、PC・タブレットを用いたアンケートやWEBフォームを活用し、来場者の関心度やニーズを詳細に記録することで、よりターゲットに合ったアプローチが可能になりました。これらの情報はCRM(顧客管理システム)と連携し、属性に応じたメールマガジンの送付や、インサイドセールスからの適切なアプローチを可能にし、より高い成約率を実現する企業が増えています。さらに、その場で次回の商談を設定する活動も多く見られます。

このようなDX化の進展により、展示会は単なる「その場のイベント」ではなく、継続的なマーケティング施策の一環として活用されるようになっています。

まとめ

BtoB企業が展示会出展を強化する理由として、オンライン施策だけではリードや商談の獲得に限界があり、広告に依存し続けることができないこと、すでにターゲットが絞られている展示会が高いリード獲得率と商談の迅速化を促進すること、さらに展示会のDX化が進み、マーケティング戦略との連携が容易になったことが挙げられます。

特に、オフラインの価値を再評価しながらデジタル施策と組み合わせることで、展示会の効果を最大限に引き出す動きが活発になっています。今後、展示会を活用するBtoB企業は、単なる出展・新作発表会にとどまらず、データの活用やフォローアップ戦略を強化し、より戦略的に出展することが求められます。展示会出展をまだ行っていない企業は、この機会に出展を検討してみてはいかがでしょうか。