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【展示会レポート】人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA:未来を形作る自動車技術の最前線

作成者: Shinsuke Uei|2025/05/21

2025年5月21日から23日にかけて、パシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展 2025」に参加しました。この展示会は、自動車業界の最新技術が一堂に集まる国内最大級のイベントとして、毎年多くの注目を集めています。

近年の自動車業界は、CASE(Connected, Autonomous, Shared & Services, Electric)に象徴される大変革期にあり、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みも加速しています。電動化技術の進化はもちろん、ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)の概念が広まり、AIを活用した自動運転技術やコネクテッドサービス、さらにはサステナブルな材料開発や生産技術に至るまで、その領域は多岐にわたります。

このような背景のもとで開催される「人とくるまのテクノロジー展 2025」は、自動車産業の現状と未来の方向性を直接感じることができる貴重な機会です。本レポートでは、会場の熱気や注目された技術トレンドを中心に、その様子をお伝えします。この記事が、皆様のビジネスや研究開発活動における新たな発見やヒントに繋がる一助となれば幸いです。

第1章:主催とイベント概要について

「人とくるまのテクノロジー展 2025」は、公益社団法人自動車技術会(JSAE)が主催する、自動車技術に特化した展示会です。自動車技術会は、自動車に関する学術や技術の進歩を促進し、学術文化の振興や産業経済の発展、国民生活の向上に貢献することを目的に活動している団体であり、この展示会は業界内外から高い信頼と評価を受けています。

イベントの目的と特徴

この展示会の主要な目的は、自動車業界に携わる技術者や研究者が最新の技術トレンドを共有し、交流を深めることで、さらなる技術革新を推進することです。出展内容は、完成車メーカー、部品サプライヤー、素材メーカー、計測・試験機器メーカー、ソフトウェア開発企業、研究機関など、自動車を構成するあらゆる技術分野を網羅しています。

開催概要

  • 名称:人とくるまのテクノロジー展 2025 横浜(Automotive Engineering Exposition 2025 Yokohama)
  • 会期:2025年5月21日(水)~5月23日(金)
  • 会場:パシフィコ横浜 展示ホール・ノース
  • 主催:公益社団法人自動車技術会(JSAE)
  • 来場者数:約70,000人以上(見込み) ※2024年横浜開催の来場者数は75,972人

主要テーマとコンセプト

「人とくるまのテクノロジー展 2025」では、最近の自動車業界における重要な技術テーマが幅広く取り上げられています。具体的には、「電動化技術(EV、PHEV、FCVなど)」、「自動運転・ADAS(先進運転支援システム)」、「コネクテッド技術・MaaS」、「軽量化技術・新素材」、「環境対応技術・カーボンニュートラル」、「安全技術」、「NVH(騒音・振動・ハーシュネス)」、「生産技術・DX」といった分野が中心です。

会場では、これらのテーマに関連する最新の製品やソリューションが展示されるだけでなく、専門家による講演会やセミナーも多数開催され、参加者はそれぞれの興味のある分野で深い知識を得ることができます。特に、SDVの進展や、AI技術のさらなる応用、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラル達成に向けた取り組みなどが、主要なトピックとして注目されています。

この展示会は、自動車業界の「今」を映し出す鏡であると同時に、数年先の未来を見通すための重要なプラットフォームとしての役割を果たしています。


第2章:来場者の傾向

「人とくるまのテクノロジー展 2025」の会場は、初日から多くの来場者で活気に満ちていました。参加者の多様さから、自動車産業の広がりとこの展示会への高い関心を改めて実感しました。

多様な専門分野からの参加者

会場に訪れた多くの来場者は、自動車メーカー、部品サプライヤー、素材メーカー、電機メーカー、IT・ソフトウェア企業に所属する人々でした。彼らは、自社の専門分野における最新技術の動向を調査し、新たな技術の種を見つけ、製品の採用や異業種企業との協業の可能性を探るという目的を持って、熱心に各ブースを訪れ、出展者と情報交換を行っていました。特に、自動運転、コネクテッド、EVといったCASE領域の技術や、それらを実現するための半導体技術、センサー技術、AIアルゴリズム、サイバーセキュリティ対策といったテーマに多くの人が関心を寄せている様子が見受けられました。また、カーボンニュートラルの実現に向けた軽量化素材やリサイクル技術、代替燃料などの分野でも、ブース内で活発な商談が行われていました。

ビジネス機会を求める層も活発に

技術者や研究者に限らず、製品企画、調達、生産技術、品質管理、営業などの部門の担当者や、経営層に近い役職の方々も見られました。サプライチェーンの再編や新たなモビリティサービスの登場など、業界構造が大きく変化する中で、企業間の連携やオープンイノベーションの重要性が増しており、この展示会はそのような出会いの場としても機能していることが感じられます。

次世代を担う若手や学生の姿も

また、将来の自動車業界を支えることになるであろう大学生(小学生も来場していた)や若手研究者と思われるグループも多く見受けられました。彼らは、最先端技術に直接触れることで学びを深め、自分のキャリア・将来を考える上で貴重な情報を得ようと、興味津々で展示を見学していました。

国際的な広がり

国内からの来場者が中心ではあるものの、海外からの来場者の姿も多く、本展示会が国際的な情報発信・収集の場としての役割も果たしていることが分かります。海外企業の出展も多くイギリスやカナダはパビリオンも設置されていました。グローバルな視点での技術開発競争が激化する中、国境を越えた知見の共有や連携の重要性が改めて認識されます。

第3章:出展ブースの様子

広大な会場には、数多くの企業・団体がブースを構え、最新の技術や製品、ソリューションを競って展示していました。ここでは、特に注目を集めていた技術分野や、印象的だった展示の傾向についてご紹介します。

1. 電動化技術(xEV)の深化と多様化

電動化技術は展示会の主要テーマの一つで、バッテリー技術の進化やモーターの効率化、小型化が多く展示されました。次世代バッテリーやリチウムイオンバッテリーの性能向上、リユース・リサイクルなども注目されました。駆動システムでは小型高出力なe-Axleや次世代パワー半導体の効率向上がアピールされ、充電インフラでは急速充電やワイヤレス充電、V2G対応の充放電器が展示されました。

2. 自動運転・ADAS技術のさらなる進化と社会実装への取り組み

自動運転技術の進化も加速しています。センシング技術のLiDARやカメラなどのセンサーの高性能化とセンサーフュージョン技術など。 AI・認識技術・ディープラーニングによる物体認識や行動予測の精度向上が注目されて安全性を強調した展示も目立っていました。

3. コネクテッド技術とSDVへの潮流

コネクテッド技術の重要性は、SDVとともに高まっています。5Gを利用したV2X通信やOTAによるソフトウェアの更新、車載イーサネットが紹介されました。SDVの実現に向けたOSやミドルウェアの紹介も盛んに行われていました。さらに、車両データを活用した新しいサービスの提案やデータ分析基盤にも多くの関心が寄せられていました。

4. カーボンニュートラル実現に向けた多様なアプローチ

電動化に加え、カーボンニュートラル達成の技術が模索されています。軽量化材料である高張力鋼板、アルミ合金、CFRPなどの先進材料と異種材料接合技術が展示されました。水素エンジン、合成燃料、バイオ燃料などの研究や内燃機関の熱効率向上技術が見られました。さらにはバイオプラスチックやリサイクル材の活用、CO2削減の取り組みも紹介されていました。

5. 生産技術の革新とスマートファクトリー化

高品質なクルマを効率的に生産する技術の進化も重要なテーマとなっています。産業用ロボットや協働ロボット、AGVを活用した生産ラインの自動化。IoTで設備を繋ぎ、AIでデータを分析し、品質や生産性を向上させるスマートファクトリー。工場を仮想空間で再現し、最適な生産計画を検討するデジタルツイン技術。 3Dプリンティングやレーザー加工など。

各ブースでは、デモ機やカットモデルの展示、VR/ARを活用した体験型コーナー、プレゼンテーションが盛んに行われており、来場者は熱心に立ち止まり、最新技術の情報収集や意見交換を行っていました。大手車体メーカーのブースには常に多くの人が集まり、活発な議論があちこちで見られました。

まとめ

「人とくるまのテクノロジー展 2025」は、日本の自動車業界の変革と技術開発の活力を強く感じさせる場でした。電動化、自動運転、コネクテッド、カーボンニュートラルのトレンドが進む中、ソフトウェアの重要性が増し、異業種連携やオープンイノベーションが不可欠です。特に、技術の統合と社会システム全体での価値提供のテーマが増えていました。

再生可能エネルギーと連携したEVのエネルギーマネジメントや、都市交通システムと連携した自動運転サービスなど、持続可能なモビリティ社会の実現に向けた動きが加速しています。素材技術や生産技術の重要性も再認識され、高性能な部品やシステムの実現には革新的な材料と高品質な加工技術が不可欠です。自動車産業は挑戦と機会に満ちており、その最前線を体感できたことは大きな収穫でした。本レポートが、来場できなかった方々に会場の雰囲気を伝え、来場者には視察内容を振り返る資料となれば幸いです。

今後も自動車業界の最新動向に注目し、有益な情報発信を続けます。株式会社ネクスドライブでは、展示会出展・イベントのサポートを提供し、展示会の成果を最大限に引き出します。お気軽にご相談ください。